タングステンは、粉末冶金や超硬工具、電子部品といったハイテク製品の原材料となる重要な金屬である。中國はタングステンの埋蔵量及び精鉱生産量において、いずれも世界の90%以上を占め、レアアースと同様、資源的に圧倒的優(yōu)位性を占めている。本稿では、最近、中國有色金屬工業(yè)協(xié)會が報告した2007年の中國タングステン産業(yè)の動向について紹介する。 |
1. 中國國內のタングステン供給量と輸出量 1-1. 國內タングステン精鉱生産量、前年同期比0.72%増 中國有色金屬工業(yè)協(xié)會の統(tǒng)計によると、2007年の國內タングステン精鉱の生産量が2006年同期比で0.72%増加し、全國タングステン精鉱の換算量(65%W03)は80438tであった。そのうち江西省の生産量は37,250tで同期比7.2%の減少、湖南省の生産量は30,952tで2007年同期比14.63%増であった。江西省の生産量が全國総生産量に占める割合は46.31%、湖南省は38.48%で、江西と湖南で全國総生産量の84.79%を占めている。 國土資源部からの2007年タングステン鉱山及びレアアース鉱山の採掘総量規(guī)制指標の通知によると、2007年の全國タングステン精鉱(65%W03)の採掘総量規(guī)制指標は59,270t、そのうち総合回収量は4,460tとなっているが、毎年の実質採掘量は8萬t前後あり、割當額の水準をはるかに上回っている。企業(yè)によっては罰金を払いながらも増産を続けているところもあり、今後、関連部門はこの方面の監(jiān)督を強化していく必要がある。
表1. 2007年中國省別タングステン精鉱生産量(65%WO3換算量)
No. |
省・自治區(qū)名稱 |
生産量(t) |
2007年割合 |
2007/’06増減 |
2006年 |
2007年 |
1 |
江 西 |
40,140 |
37,250 |
46.3% |
-7.20% |
2 |
湖 南 |
27,002 |
30,952 |
38.5% |
14.63% |
3 |
広 西 |
2,167 |
3,754 |
4.7% |
73.25% |
4 |
河 南 |
737 |
2,964 |
3.7% |
302.17% |
5 |
広 東 |
7,656 |
2,741 |
3.4% |
-64.20% |
6 |
內蒙古 |
1,022 |
1,191 |
1.5% |
16.52% |
7 |
雲 南 |
1,086 |
1,086 |
1.4% |
0.01% |
8 |
浙 江 |
117 |
188 |
0.2% |
60.68% |
9 |
!〗 |
53 |
179 |
0.2% |
239.56% |
10 |
湖 北 |
125 |
132 |
0.2% |
5.85% |
|
合 計 |
79,863 |
80,438 |
100.0% |
0.72% |
図1. 中國のタングステン鉱産図(2007年)
1-2. タングステン輸出量、前年比7.96%減 中國稅関の統(tǒng)計資料によれば、2007年タングステン製品の輸入額は155.19百萬US$で前年同期比8.54%減、輸出額は926.15百萬US$で前年同期比1.65%増であった。 2007年の中國タングステン製品輸出量は26,111t(W純分)で2006年同期の28369.3tと比べ7.96%下回った。同期の輸入量は5,467.8t(W純分)で2006年同期比24.16%減であった。2007年のタングステン純輸出量は20643.2t(W純分)で2006年同期比2.44%減であった。4~12月の輸出量からみると、6月のタングステン輸出量は増値稅の還付があり、大幅に増加したが、7月、8月及び9月に再び大幅に減少し、10月、11月、12月に多少増加した。表2は2005~2007年のタングステン純輸出量を示したものである。
表2. 2005~2007年のタングステン輸出量 (t:W純分)
|
2005年 |
2006年 |
2007年 |
2007/’06 増減 |
輸出量 |
31,150.2 |
28,369.3 |
26,111.0 |
-7.96% |
輸入量 |
4,600.4 |
7,209.5 |
5,467.8 |
-24.16% |
純輸出量 |
26,549.8 |
21,159.8 |
20,643.2 |
-2.44% |
2007年のタングステン輸出量は7.96%減少しているが、同期輸入量が24.16%減少しているため、純輸出量の減少は2.44%と少ない。中國のタングステン輸出量が減少し、2007年のタングステン輸出割當量は1.54萬tで2006年よりも400t減少、2008年は更に1.49萬tまで削減される。
2. 2007年中國タングステン産業(yè)の注目點 2-1. タングステン資源稅の調整 財政部國家稅務総局の鉛・亜鉛鉱石等の稅目に関する資源稅適用稅額基準調整に関する通知に基づき、2007年8月1日よりタングステン鉱石単位の稅額基準が次のように調整された。即ち、“三等鉱山※1”はt(トン)當り9元、“四等鉱山※2”は同8元、“五等鉱山※3”は同7元である。1993年に制定された資源稅基準と比較すると、現在の稅率は以前の15~17倍で、実際の運用ではタングステン精鉱の生産量によって課稅され、2,000~2,400元/tとなっている。 中國の現行資源稅は従量課稅法が採られており、課稅対象にはそれぞれ、t(トン)または、m3(立法メートル)を単位として固定稅額が課稅されているが、こうした稅制には幾つかの不合理な點がある,F行資源稅は鉱物資源と塩のみを課稅対象としていが、資源の合理的な開発利用の促進に不利なことから、今後、課稅範囲が拡大される。また、稅率が低過ぎるために資源価格の市場參入コストが過度に低くなり、企業(yè)と國家経済の成長方式の転換が難しくなる。「2007年中國國際鉱業(yè)大會」の席上で、國土資源部副部長民から中國は目下、資源稅の課稅方式を「従量課稅」から「従価課稅」方式に変更する改革案を検討中で、ほぼその作業(yè)が終了していると発言した。 改革後に従価課稅制度が実施された場合、製品金額を単位として一定の稅率をかけて稅額が計算されることになるが、これにより稅収と資源市場の価格を直接関連付けることができるようになる。
2-2. 中國タングステン産業(yè)100周年記念式典が江西省で開催 タングステン産業(yè)100年の変遷を回顧し、100年の輝かしい業(yè)績を讃え、科學技術の成果を交流し合い、発展のための青寫真を描くことを目的に、11月8日、中國タングステン産業(yè)100周年記念式典が江西省州市で開催された。式典に際し、國務院総理溫家寶は挨拶の中で「保護及び合理的な開発利用を進める方針を堅持し、タングステン産業(yè)の持続可能な発展を実現する」と明言した。 1907年に江西省州市大余県西華山でタングステン鉱山が発見されて以來、中國のタングステン業(yè)界は100年の歴史を有する。州市は中國タングステン発祥の地であり、その歴史は長く、豊かな資源を有し「世界のタングステン都市」とも呼ばれている。州はこの100年間で全世界に対し累計120萬t弱のタングステンを供給し、中國ひいては世界のタングステン産業(yè)の発展に大きな貢獻を果たしてきた。民間による手掘りから自動化採掘・製錬、高付加価値加工等の発展段階を経て、州は今や萬全なタングステン産業(yè)體系を形成するまでになった。統(tǒng)合及び規(guī)範化の統(tǒng)一、資源と加工の結合をその方向性とした発展が推し進められ、タングステン精鉱の高付加価値加工が力強い成長を遂げ、タングステン産業(yè)の全體的水準が向上した。
2-3. タングステン輸出関稅の引上げ 國務院関稅稅則委員會の「2008年関稅実施方案」によりタングステンの輸出関稅が更に引上げられた。2008年のタングステン製品の暫定関稅率は表3のとおりである。
表3. 2008年タングステン製品暫定関稅率
No. |
稅則番號 |
商品名 |
暫定稅率(%) |
2007年 |
2008年 |
1 |
26209910 |
主にタングステンを含む鉱灰及び殘渣 |
10 |
10 |
2 |
28259011 |
タングステン酸 |
0 |
10 |
3 |
28259012 |
三酸化タングステン |
5 |
10 |
4 |
28259019 |
その他タングステンの酸化物及び窒素酸化物 |
0 |
10 |
5 |
28418010 |
パラタングステン酸アンモニウム |
5 |
10 |
6 |
28418020 |
タングステン酸ナトリウム |
0 |
10 |
7 |
28418030 |
タングステン酸カルシウム |
0 |
10 |
8 |
28418040 |
メタタングステン酸アンモニウム |
5 |
10 |
9 |
28418090 |
その他のタングスタン塩 |
0 |
10 |
10 |
28499020 |
炭化タングスタン |
5 |
5 |
11 |
72028010 |
タングスタン鉄 |
10 |
20 |
12 |
72028020 |
珪タングスタン鉄 |
15 |
20 |
13 |
81011000 |
タングステン粉 |
5 |
5 |
14 |
81019400 |
未鍛造タングステン |
5 |
5 |
15 |
81019700 |
タングステン滓 |
15 |
15 |
2-4. タングステンを外資禁止産業(yè)目録に登録 國家発展改革委員會、商務部令第57號により「外商投資産業(yè)指導目録(2007年改訂)が公布され、2007年12月1日から施行されている。タングステン・モリブデン・錫・アンチモン・蛍石の探査と採掘が外商投資禁止産業(yè)目録に入れられた。
2-5. 「タングステン業(yè)界參入條件」の公布 國家発展改革委員會第94號「タングステン業(yè)界參入條件」により、2007年1月1日からタングステン製品生産企業(yè)の設立、配置、生産規(guī)模、資源の回収利用及びエネルギー消費、環(huán)境保護、製品品質、安全生産及び職業(yè)病の防止、労働保険の7方面について規(guī)定されている。
2-6. タングステン製品を加工貿易禁止目録に登録 2007年第1回加工貿易禁止目録は、2007年4月26日より施行され、第2回加工貿易禁止目録は2008年1月21日から施行される。禁止品目は表4のとおりである。
表4. タングステン製品加工貿易禁止品目
商品コード |
商品名 |
禁止方式 |
第1回加工貿易禁止目録 |
2611000000 |
タングステン鉱砂及びその精鉱 |
輸入 |
2825901200 |
三酸化タングステン |
輸出 |
2849902000 |
炭化タングステン |
輸出 |
7202801000 |
タングステン鉄 |
輸出 |
7202802000 |
珪タングステン鉄 |
輸出 |
8101100010 |
顆粒<500μmのタングステン及びその合金 |
輸出 |
8101940000 |
未鍛造タングステン、簡単な焼成により形成された棒 |
輸出 |
8101970000 |
タングステン滓 |
輸出 |
8101991000 |
鍛造タングステン棒、型材及び異型材、板、片、帯、箔 |
輸出 |
第2回加工貿易禁止目録 |
2825901100 |
タングステン酸 |
輸出 |
2825901910 |
青色酸化タングステン |
輸出 |
2825901990 |
その他タングステンの酸化物及び窒素酸化物 |
輸出 |
2841802000 |
タングスタン酸ナトリウム |
輸出 |
2841803000 |
タングスタン酸カルシウム |
輸出 |
2841804000 |
メタタングスタン酸アンモニウム |
輸出 |
2841809000 |
その他タングスタン酸塩 |
輸出 |
3824300010 |
混合の未焼結金屬炭化タングステン |
輸出 |
2-7. 湖南有色金屬集団公司、豪州キング島のタングステン採掘を決定 湖南有色金屬集団公司(HNMC)の計畫では、キング島のタングステン(灰重石)鉱山King Island scheelite mineの操業(yè)を2009年の第4四半期に開始する。キング島のタングステン鉱山は豪州南部のタスマニア州に位置する。HNMC社は既にKIS社(King Island scheelite Ltd.)と一連の契約を締結しており、今後は豪州外資管理局、中國政府、KIS株主の承認を受ける。 契約によれば、雙方はそれぞれ50%づつ出資して合弁會社を設立する。湖南有色金屬集団公司がKISの10%の株式を購入してキング島プロジェクトの50%の株式を占め、KISが本工事の基礎建設と管理を擔當する。予定工期は約21か月で、計畫では2009年の第4四半期に最初のタングステン精鉱を生産する。
2-8. タングステン上場企業(yè)に新メンバー 現在、江西崇義章源タングステン製品有限公司は制度改革を進め、2008年年初の上海への上場の準備をしている。崇義章源タングステン製品有限公司は民営企業(yè)で、主にタングステンのシリーズ製品を取扱っている。現在、既に上場しているタングステン會社には“アモイタングステン業(yè)”、“中タングステン高新”、“安泰科技”、“辰州鉱業(yè)”がある他、香港で上場している多角経営の湖南有色集団公司がある。
2-9. 國內企業(yè)が積極的に資源埋蔵量を拡大 湖南有色集団公司は2007年4月に現金3.54億元で“衡陽遠景タングステン業(yè)”の98.33%の株式を買収した。その湖南省衡南県にある川口タングステン鉱山の埋蔵量は30萬tで、世界五大タングステン鉱山の一つである。また、湖南有色集団公司は豪州キング島のタングステン鉱山の開発も手掛けている。 2007年12月20日、湖南有色集団公司は、湖南省州に登録資本金5億元にて“湖南有色新田嶺タングステン業(yè)有限公司”を設立し、資産買収を進める計畫について発表した。湖南有色集団公司によれば、湖南有色新田嶺タングステン業(yè)は新田嶺鉱區(qū)14か所の資産買収を行い、現地の資源の統(tǒng)合をさらに進めていく方針である。 アモイタングステン業(yè)公司は積極的に上下流製品の充実に取組んでいる。2007年11月1日、同社は2007年の重點投資プロジェクトである“福建寧化行洛坑タングステン鉱山プロジェクト”がほぼ竣工し、近々試験生産に入るという発表を行った。行洛坑タングステン鉱山の採掘・選鉱プロジェクトの投資総額は3.8億元、建設規(guī)模は鉱石処理量2,500t/日、タングステン精鉱の年間生産量2,400t、副産物のモリブデン精鉱の年間生産量は200tで、これまでに3.2億元の投資が完了している。プロジェクトの竣工後は國內最大の重力選鉱工場、最大の生産量を誇るタングステン鉱山となり、年間生産額2億元超と納稅額3,000萬元が実現されることになる。アモイタングステン業(yè)公司は福建寧化行洛坑タングステン鉱山の98.95%の株式を保有している。 また、アモイタングステン業(yè)公司は洛陽鉱業(yè)有限責任公司に対し60%の株式參加を果たした後の12月20日、洛陽市人民政府とタングステン高付加価値加工製品プロジェクト、鄭西鉄道旅客専門線洛陽南駅周辺地區(qū)開発への參畫、洛陽市商業(yè)銀行の株式制改革への參畫について投資合作意向書を締結すると発表した。
3. 2007年中國のタングステン消費量は前年同期比7.66%増 2007年の超硬合金の生産量は15,333tで、9,775tのタングステン原鉱が消費され、2006年同期比10.44%増となる。フェロタングステン生産量は12,980tである。そのうち輸出が5,633t、國內消費が7,347tで5,510tのタングステン原鉱が消費された。 2007年の中國の粗タングステンワイヤとバーの年間生産量は2,215tであった。また、タングステン合金電極等の新材料の國內使用量は714tに高比重タングステン合金のタングステン使用量約915tを加えると、中國タングステン加工材のタングステン使用量は3,844tである;瘜W工業(yè)及びその他の製品に使われたタングステンは約920tである。 上記のタングステンの主要消費分野を見ると、2007年の中國のタングステン総消費量は20,049tで2006年同期比7.66%増、タングステンの消費構造は硬質合金49%、タングステン特殊鋼27%、タングステン材19%、化學工業(yè)5%となっている。 「2004年超硬合金市場」報告によれば、1999年から中國のタングステン消費量は1萬tを突破するようになり、2007年のタングステン消費量は20,049tに達し、1999~2007年は年間平均8.53%の伸び率を示している。
4. おわりに 第11次5か年(2006~2010年)計畫以降、生産量・埋蔵量で圧倒的優(yōu)位性を占めるレアアース、レアメタルについて中國政府は、輸出抑制策、國內資源保護政策を次々と講じ、タングステンの約85%を中國からの輸入に頼る日本にとって憂慮すべき問題となっている。これらの政策の結果、2007年の中國國內タングステン精鉱生産量は対前年比0.72%の微増、タングステン製品の輸出量は対前年比7.96%の減となった。 2008年も輸出抑制策面では、タングステンの輸出割當數量は、14,900tで2007年の15,400tから500t減少している。また、タングステン製品に対する輸出稅は5~20%と2007年に比べ、ほとんどの製品が引上げられた。國內資源保護政策面では2006年から、レアアース、タングステンについては資源の亂掘・不法採掘防止、環(huán)境汚染対策の観點から年間採掘総量を政府(國土資源部)自らがコントロールするガイドラインを設けている。2008年の採掘総量は、対前年比13%増の66,850tであるが、資源の亂掘・不法採掘については一段と厳しく管理されるものと予想される。2008年1月の雪害により、2008年1~4月期のタングステン精鉱生産量は21,238tで2007年同期比の12%減となっており、今後とも中國國內のタングステン生産量の動向及び政府の政策を注視する必要がある。
鉱山の採掘規(guī)模による分類(粗鉱生産量≧3萬t)は、國土資源部 通達208號(2004年)による。 ※1 三等鉱山:(年間粗鉱生産量)≧100萬t/年 ※2 四等鉱山:100萬t>(年間粗鉱生産量)≧30萬t ※3 五等鉱山: 30萬t>(年間粗鉱生産量) |